アンドロメダドリームファンタジー

第6章 

ユアサミヨ前皇帝をはじめとするアンドロメダの民は宇宙船に乗り込み、母船から離れて地上へと降下をはじめた。ユアサミヨ前皇帝が搭乗した船は特別なものだった。その機体、名をヤマト号といった。ヤマト号にはアンドロメダ銀河皇国の統治下にあった星々の民の DNA が保存されていたのである。それは、皇国の慈愛による統治の中心であったユアサミヨ皇帝とともに、皇国船団が最後の力を振り絞って守らなければならないものだったのである。
皇帝となったアンドロメダ・シリウスは母船内の宮殿にある玉座に座り静かに目を閉じ、瞑想に入った。ニギハヤヒ皇子もそれに寄り添い、そっと目を閉じ、精神を集中させた。
母船の外ではクーデター軍が宇宙空間からついに地球の成層圏を突破し、現在の日本国上空へと達した。しかし、戦いで4分の1を失ったとはいっても直径数百キロのアンドロメダの母船である。日本の本州の大半をその船体で覆い、その他の母船が日本国へ着陸するのをカモフラージュしていた。クーデター軍は攻撃を開始した。アンドロメダの母船に対する猛烈な一斉攻撃は、苛烈を極めた。このままでは母船は撃沈されてしまう。これだけの巨大宇宙船が上空から落ちると、日本国へと避難をはじめた他の宇宙船はともかく、眼下に広がる美しい日本の国土も傷つけてしまう。ユアサミヨ前皇帝の語った言葉だったが、母船内に残ったアンドロメダ・シリウス新皇帝とニギハヤヒ皇子の気持ちも同じだった。
「この美しい国土を、皇国のあったアメノホアカリダマと同じ目にあわせてはいけない」
「アンドロメダと同等の美しさをもつこの土地で、母上を中心として新たな皇国を築いてもらおう」


アンドロメダ・シリウスとニギハヤヒはさらに精神を集中させる。それと連動して母船が光り始める。強い光を放ったその直後、アンドロメダの母船は無数の光のシャワーとなって飛び散ったのである。
美しくも悲劇的なその光のシャワーを見たユアサミヨ前皇帝をはじめとするアンドロメダの民はそれを見た瞬間、二人の死を悟ったが、今はそれを悲しんでいる暇は無く、はやくクーデター軍から逃れるための安全な場所へ避難しなければならなかった。その光のシャワーは敵であるクーデター軍にも変化をもたらした。元々皇国の皇位継承者でありながらそれを裏切った第3皇女、第5皇子の二人である。彼女らは母船の最後とその光のシャワーを目にして、全てを悟ったのである。自分たちがクーデター軍に騙されていた事を。自分たちがどんなに愚かな行動をとったかを。
彼女たち二人はこれから残されたアンドロメダの船団がどこへ向かうか知っていた。しかし、それ以上攻撃をすることは止めた。自分たちの間違いに気づいたからである。
ユアサミヨ前皇帝の乗るヤマト号をはじめとしたアンドロメダの生き残りの船団は現在の日本の奈良県、三輪山を目指していた。母船の光のシャワーに守られながら、天理方面から超低空飛行で三輪山の中腹目掛けて航行していた。
しかし、弾幕代わりの光のシャワーの中でも、クーデター軍は攻撃を仕掛けてきた。ヤマト号は、その周囲を8機の宇宙船で固められていたが、一機、また一機と撃ち落されていく。
最後のまでヤマト号を守護した宇宙船が撃墜したのと同時に、ヤマト号は三輪山の中腹に到着。その姿を消したのである。
クーデター軍にいたアンドロメダの第3皇女と第5皇子はその秘密を知っていたがそのことを口に出さなかった。彼女たちはすでにクーデター軍の嘘に気づいていたからだ。最終的にクーデター軍はヤマト号の追跡を諦める。三輪山の中腹で突如消失したので、攻撃に耐え切れず消滅したのだろうと結論づけられたのだ。第3皇女と第5皇子は、地球から離れることとなったが、心を入れ替え、何年かかってもアメノホアカリダマの地に再びアンドロメダ銀河皇国を再興することを誓うのだった。
三輪山で消えたヤマト号は、三輪山の中腹にあ秘密の入り口から山の内部に入り、その地下にある巨大な空間へと避難していた。皇国が健在だった頃、緊急の時に作った秘密基地が全宇宙にいくつかあり、その一つがここ三輪山の地下空間(シェルター)だったのだ。
シェルターにたどり着いたユアサミヨはそこでその不思議な力を発揮する。天理上空から三輪山付近までヤマト号を守り、犠牲となった8機の宇宙船は、シェルター内に瞬間移動し、その宇宙船にそれぞれ乗っていた皇子、皇女とその船員、乗員たちは全員蘇ることが出来た。しかし、残念ながら母船に残った二人を蘇らせることは、出来なかったのである。
ヤマト号が無傷で済んだのは、母船が大破した時、その欠片が、ヤマト号を隠し、反乱軍の攻撃から守ったからである。アンドロメダシリウスとニギハヤヒの乗る母船が、皇国の存続においてもっとも重要なユアサミヨとヤマト号を守るために、その身を犠牲にしたのである。
二人の子どもをはじめとした多数の犠牲者を出したことにユアサミヨは深く傷ついていた。着る者の心を映すと言うその着衣は、薄紅の色へ変化していた。この時の彼女の着衣の色は、遥か時間を経た現在において、三輪山周辺にのみ生息する「狭井」というユリの花の色として残っているのである。
そのヤマト号の乗員が、クシミカタマミギハヤヒ一族の先祖 ( 始祖 ) となるのである。

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